「うちは営利企業じゃないし、会員も数十人だから、個人情報保護法までは関係ないだろう」——自治会の名簿について、そう考えている役員の方は少なくありません。
結論から言うと、その理解は現在の法律とは食い違っています。個人情報保護委員会(PPC)が公開している資料には、自治会・町内会が名指しで書かれています。
営利かどうかも、人数も、関係がない
個人情報保護委員会のFAQ(Q1-54)は、「NPO法人や自治会・町内会、同窓会、PTAのような非営利の活動を行っている団体も、個人情報保護法の規制を受けるのですか」という質問に対して、こう答えています。
個人情報保護法における「事業」とは、営利・非営利の別は問わない。非営利の活動を行っている団体であっても、個人情報データベース等を事業の用に供している場合は、個人情報取扱事業者に該当する——。そして、自治会・町内会、同窓会、PTAのほか、サークルやマンション管理組合なども該当し得る、と明記されています。
「5,000件を超えなければ対象外」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは以前の制度の話です。現行のPPC資料に件数の基準は書かれていません。(※なお、5,000という数字は、いまも「中小規模事業者」として安全管理措置の負担が軽くなる区分の判定基準としては残っています。対象になるかどうかの線引きではありません。)
つまり、会員名簿をエクセルで管理していれば、20世帯の自治会でも対象になり得る、というのが今の制度の建て付けです。
名簿を「作る前」に決めることがある
PPCが令和5年12月に出した「自治会・同窓会等向け 会員名簿を作るときの注意事項」は、手順を3つの段階に分けて説明しています。最初の段階は、情報を集める前です。
ここで求められているのは、利用目的を決めることです。「どのような情報を、なんのために、どのように利用するのか」。そして、名簿を配布するなら、配布する理由まで含めて具体的に定めておく必要があります。
本人から集めるときは、記入用紙に利用目的を書いておく、画面に表示しておく、といった形で伝えます。世帯主から家族の情報を聞き取る場合は、その配偶者や子どもにも利用目的を知らせる必要がある、とされています。ここは見落としやすいところです。
会員に名簿を配ることは「第三者提供」にあたる
多くの自治会がやっていて、法律上いちばん引っかかりやすいのがここです。
PPCの資料には、こう書かれています。会員に名簿を配ることは、名簿に記載されている本人以外の会員への個人データの提供にあたるので、原則として第三者提供に該当する——。第三者に提供する場合は、あらかじめ本人の同意が必要です。
「毎年配っているから」「昔からそうだから」は理由になりません。名簿を配る前提なら、集める段階で「会員に配布します」と伝えて同意を得ておく、という順番になります。
ただし、同意がなくても提供できる場合が2つ挙げられています。ひとつは法令に基づく場合(警察の捜査、裁判所や税務署からの照会など)。もうひとつは、人の生命・身体・財産を守る場合です。後者の例として、大規模災害時に家族や行政機関へ提供するケースが挙げられています。
保管と、廃棄
保管中に求められるのは、大きく分けて次のことです。
- 内容を正確かつ最新に保ち、必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努める
- 古い名簿はデータを削除し、紙は回収してシュレッダーにかけるなど、適切に廃棄する
- 漏えい・滅失・毀損を防ぐための措置を講じる(鍵のかかる引き出しに保管する、セキュリティ対策ソフトを入れる、など)
- 名簿を配った会員に対して、他人に渡さない・盗難や紛失に気をつけるよう呼びかける
- 代表者名や利用目的、安全管理措置の内容を、本人が知り得る状態にしておく
- 名簿づくりを外部に頼む場合は、委託先を監督する(持ち出し禁止、目的外利用の禁止、返却・廃棄などを書面で渡す)
紙の名簿は、この「廃棄」がいちばん難しいところです。回収しきれずに、何年も前の版が各家庭に残っているという状態は珍しくありません。
まず手をつけるとしたら
全部を一度にやろうとすると止まります。順番をつけるなら、次の3つからだと思います。
- 名簿に何を載せているか、いま書き出してみる(世帯主名だけなのか、生年月日や勤務先まで入っているのか)
- 利用目的を1〜2行で文章にして、次回の入会申込用紙に載せる
- 過去に配った紙の名簿が、いつの版まで各家庭に残っているかを把握する
なお、この記事は制度の理解を助けるためのもので、個別の自治会の運用が法に適合しているかどうかの判断ではありません。具体的な当てはめについては、お住まいの自治体の担当課や、個人情報保護委員会の相談ダイヤルにご確認ください。
MyShelterコミュニティは、自治会の回覧板・安否確認・集金の連絡をLINEで完結させる仕組みです。名簿の管理を紙とエクセルの往復から切り離したい、というご相談も承っています。
住民のみなさまのご利用は無償です。まずは現状を伺うところからお手伝いします。
出典
- 個人情報保護委員会 FAQ Q1-54(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-54/)
- 個人情報保護委員会「自治会・同窓会等向け 会員名簿を作るときの注意事項」令和5年12月(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/meibo_sakusei.pdf)
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法の基本」令和5年9月(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/kihon_202309.pdf)